リアルター（REALTOR）とは？不動産業界の専門資格を徹底解説

不動産用語『リアルター REALTOR』とは？

不動産取引の初心者

「リアルター」についてよく分かりません。具体的に教えてください。

不動産の研究家

「リアルター」とは、米国における不動産仲介人の資格名称です。特定の基準を満たし、全米不動産協会の倫理規定に従っていることが必要です。

不動産取引の初心者

なるほど。それは各州で定められているのですか？

不動産の研究家

はい、各州で不動産取引業の免許を取得する必要があります。この資格は業界内で高い評価と社会的地位を有しています。

リアルター（REALTOR）とは？不動産業界の専門資格を徹底解説

不動産取引において「リアルター」という言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。しかし、その正確な意味や日本での扱いについて詳しく知っている人は意外と少ないものです。

リアルター（REALTOR®）とは、米国の全米不動産協会（NAR）に所属し、厳格な倫理規定を遵守することを誓約した不動産専門家のことです。

この称号は連邦商標として保護されており、NAR会員以外は使用することができません。

この記事では、リアルターの基本概念から日本での状況、さらには業界の最新動向まで、プロの視点から徹底的に解説いたします。不動産業界への転職を考えている方、米国不動産投資に興味がある方、単純に知識を深めたい方まで、すべての読者に価値ある情報をお届けします。

リアルター（REALTOR®）の基本定義と歴史

リアルターとは何か

リアルター（REALTOR®）は、米国における不動産業界の最高位の専門資格です。単なる不動産免許保有者とは大きく異なり、この称号を名乗るためには厳格な条件をクリアする必要があります。

REALTOR®という名称は、1949年と1950年に米国特許庁に登録された連邦商標であり、全米不動産協会（National Association of REALTORS®：NAR）の会員のみが使用できる限定的な称号です。

この商標保護により、業界内での権威性と信頼性が確立されています。

全米不動産協会（NAR）の概要

全米不動産協会（NAR）は、1908年5月12日にシカゴで「全米不動産取引所協会」として設立された米国最大の業界団体です。創設時は120名の会員、19の理事会、1つの州協会からスタートしましたが、現在では以下のような巨大組織に発展しています：

会員数: 150万人以上（2025年1月時点）
地域協会: 約1,200の地域協会・理事会
州・地域協会: 54の州・地域協会
国際展開: 66カ国に87の協力協会

この規模により、NARは米国における最大の業界団体として確固たる地位を築いています。組織の使命は「すべての人の不動産権利を保護、推進、発展させるためにREALTOR®を支援すること」と定められており、業界の発展と消費者保護の両立を目指しています。

リアルターの歴史的背景

REALTOR®という用語の誕生には興味深い歴史があります。これは「neologism（新造語）」として1916年にNARが開発した造語で、従来の「real estate agent（不動産エージェント）」とは異なる、より高い専門性と倫理性を持つ職業人を表現するために作られました。

1913年には業界初となる倫理規定「Code of Ethics」が採択され、これは現在でもREALTOR®の行動指針として機能しています。

この倫理規定は、当時としては革新的な「Service to the Public（公衆への奉仕）」を基本理念として掲げ、不動産業を単なる商売から真の専門職へと格上げする役割を果たしました。

リアルターと不動産エージェントの違い

基本的な区別

多くの人が混同しがちですが、「不動産エージェント」と「REALTOR®」には明確な違いがあります：

不動産エージェント（Real Estate Agent） 州が発行する不動産免許を保有し、不動産売買の仲介業務を行う資格を持つ専門家です。この免許は州ごとに発行され、基本的な法的要件を満たしていれば取得できます。

REALTOR® 不動産エージェントの資格に加えて、NARの会員であり、厳格な倫理規定に従うことを誓約した専門家です。つまり、すべてのREALTOR®は不動産エージェントですが、すべての不動産エージェントがREALTOR®ではありません。

REALTOR®になるための具体的要件

REALTOR®の称号を取得するためには、以下の段階的なプロセスを経る必要があります：

第1段階：不動産免許の取得

州が認定する不動産教育機関での30-90時間の授業受講
州・国の不動産法、実務に関する試験合格
年次更新料の支払いと継続教育の受講

第2段階：NAR入会要件

地域不動産協会への加入（必須前提条件）
NAR倫理規定への誓約署名
年会費の支払い（2024年時点で年間156ドル＋45ドルの査定費）
継続的な倫理教育の受講

第3段階：継続的義務

3年ごとの倫理教育訓練の完了
フェアハウジング/反偏見訓練の受講（2025年より義務化）
専門能力向上のための継続教育

重要なポイントとして、不動産会社の主要責任者がNAR会員でなければ、その会社の従業員はNAR会員になることができないという規則があります。これにより、組織全体での倫理性確保が図られています。

ブローカーとエージェントの関係

米国の不動産業界では、さらに以下の区分が存在します：

不動産ブローカー（Real Estate Broker）

追加の教育・訓練を受けた上級ライセンス保有者
独立して事業を運営可能
他の不動産エージェントを雇用可能
より複雑な取引や投資案件を扱える

アソシエイト・ブローカー

ブローカーライセンスを持ちながら、他のブローカーの下で働く専門家
管理責任を負わずに専門業務に集中できる立場

このように、米国の不動産業界は明確な階層構造と専門分化が進んでおり、REALTOR®はその頂点に位置する専門資格として位置づけられています。

NARの倫理規定（Code of Ethics）詳細解説

17の基本条項概要

REALTOR®が遵守すべき倫理規定は、17の基本条項（Articles）と71の実践基準（Standards of Practice）から構成されています。2025年6月5日に一部改正が行われ、現在も進化を続けています。

顧客・依頼者への義務（第1条〜第9条）

第1条：忠実義務 REALTOR®は顧客の利益を最優先に保護・推進し、すべての関係者を誠実に扱います。具体的には、顧客にとって最も有利な条件での取引成立を目指し、個人的利益よりも顧客利益を優先する義務があります。

第2条：正確性の確保 不動産や取引に関する重要事実について、誇張、虚偽表示、隠蔽を行ってはなりません。この規定により、物件の欠陥や市場状況について正確な情報提供が義務づけられています。

第3条：協力義務 他のREALTOR®と協力して顧客の最善の利益を図ります。競合他社であっても、顧客のためには積極的に協力し、情報共有を行う文化が醸成されています。

一般社会への義務（第10条〜第14条）

第10条：平等なサービス提供 人種、宗教、性別、障害、家族構成、国籍、性的指向、性自認に基づく差別を禁止します。2025年の改正により、ハラスメントの定義がより明確化され、執行体制が強化されました。

第11条：専門能力の維持 自身の専門能力を超える業務については、適切な専門家への紹介を行います。法的助言、税務相談、住宅検査などの分野で、無資格者による不適切なサービス提供を防止します。

同業者への義務（第15条〜第17条）

第15条：公正な評価 他の不動産専門家について、真実に基づく誤解を招かない評価のみを行います。根拠のない批判や誹謗中傷は厳格に禁止されています。

第16条：専属契約の尊重 他のREALTOR®が顧客と結んだ専属代理契約や専属仲介契約を尊重します。顧客の奪い合いではなく、協力による業界全体の発展を重視します。

第17条：紛争解決 REALTOR®同士の契約上の紛争や特定の非契約紛争については、法廷での争いではなく調停・仲裁による解決を優先します。

2025年の主要な改正点

ハラスメント定義の明確化 標準実践10-5において、ハラスメントの具体的定義が設けられ、NAR会員行動規範と整合性が図られました。これにより、執行の一貫性と公平性が向上しています。

ソーシャルメディア使用ガイドライン強化 標準実践15-5が改正され、デジタルコミュニケーションにおける職業倫理の明確化が行われました。SNS上での発言や投稿についても、REALTOR®としての責任が問われることが明文化されています。

継続教育要件の強化 2025年から、従来の倫理教育（3年ごと）に加えて、フェアハウジング/反偏見訓練（2時間以上）が義務化されました。これにより、差別防止に対する取り組みが一層強化されています。

リアルターの資格取得プロセスと要件

州別ライセンス要件の詳細

米国の不動産免許は州ごとに管理されており、要件に大きな差があります：

教育時間要件

カリフォルニア州：135時間
テキサス州：180時間
フロリダ州：63時間
ニューヨーク州：77時間

試験内容 全州共通で、以下の分野から出題されます：

不動産法（連邦法・州法）
不動産実務・慣行
金融・投資分析
物件評価・査定
契約書作成・解釈

継続教育 免許更新時（1-2年ごと）に、州が定める継続教育の受講が必要です。多くの州で年間15-30時間の受講が義務づけられています。

NAR入会の具体的手順

ステップ1：地域協会への加入 まず、活動予定地域の地域不動産協会（約1,200団体から選択）に加入する必要があります。隣接州の協会への加入も認められています。

ステップ2：資格審査

不動産免許の有効性確認
過去の懲戒処分歴の調査
推薦者からの評価確認
倫理規定への理解度テスト

ステップ3：会費の支払い

NAR年会費：156ドル
NAR査定費：45ドル
州協会費：州により異なる（年間200-500ドル程度）
地域協会費：地域により異なる（年間100-300ドル程度）

ステップ4：継続的義務の履行 入会後も以下の義務を継続的に果たす必要があります：

年次会費の納入
倫理教育の受講（3年ごと）
専門能力向上研修への参加
倫理規定違反の通報義務

専門分野別の認定制度

NARでは、基本のREALTOR®資格に加えて、専門分野別の認定制度を提供しています：

住宅分野

CRS（認定住宅専門家）
GRI（不動産大学院）
ABR（認定バイヤー代表）

商業不動産分野

CCIM（認定商業投資メンバー）
SIOR（産業・事務所不動産協会）
CPM（認定物件管理者）

投資・開発分野

CIPS（認定国際物件専門家）
PMN（パフォーマンス管理ネットワーク）

これらの専門認定を取得することで、特定分野での専門性をより明確に示すことができ、顧客からの信頼度も向上します。

日本における「リアルター」の現状と意味

日本の不動産業界での理解

日本において「リアルター」という用語は、主に以下の文脈で使用されています：

学術・専門用語として 日本の主要不動産会社（三井住友トラスト不動産、アットホーム、三菱UFJ不動産販売等）の用語集では、「NAR（全米リアルター協会）の会員である不動産仲介人（broker）」として正確に定義されています。これは米国の正式な定義と完全に一致しており、業界内での理解は適切です。

誤用・俗用による混乱 一般的な会話では、「リアルター＝不動産屋」という誤った理解が散見されます。「俗に言うアメリカの不動産屋」という表現が使われることもありますが、これは正確ではありません。REALTOR®は特定の資格・称号であり、単なる「不動産屋」とは大きく異なります。

日本の不動産会社での活用

興味深いことに、日本には「リアルター」を社名に使用している不動産会社が複数存在します：

北海道のリアルターグループ 旭川市を拠点とする株式会社リアルターは、1963年創業の北海道富士興業株式会社をルーツとする総合不動産グループです。2023年で創業60周年を迎えた歴史ある企業で、以下の事業を展開しています：

不動産売買仲介
賃貸仲介・管理
商業用テナント仲介
相続支援コンサルティング
資産運用アドバイス

その他の地域の事例

湯河原・真鶴・熱海エリアの不動産会社
大阪府松原市の地域密着型不動産会社
各地の中小不動産会社での商号使用

これらの会社は、米国のREALTOR®制度に直接関連するものではありませんが、「高品質な不動産サービス」をイメージさせる名称として採用していると考えられます。

日本の宅建士制度との比較

日本には米国のREALTOR®に相当する制度として「宅地建物取引士（宅建士）」があります：

共通点

国家資格による専門性の証明
継続的な能力向上義務
消費者保護を重視した制度設計

相違点

宅建士：法的資格（業務独占資格）
REALTOR®：業界団体による任意資格
宅建士：個人の資格
REALTOR®：組織への所属と倫理規定遵守が前提

これらの比較から、両制度とも不動産取引の専門性向上と消費者保護を目的としていることがわかります。

リアルターの業務内容と専門サービス

基本的な業務範囲

REALTOR®の業務は、州の不動産免許に基づく基本業務に加えて、NAR倫理規定による高度な専門サービスを提供します：

売買仲介業務

物件評価・市場分析
マーケティング戦略の立案・実行
買主・売主間の交渉代理
契約書作成・条件調整
決済手続きのサポート

専門コンサルティング

投資収益性分析
税務影響評価（税理士との連携）
資産ポートフォリオ最適化
相続・事業承継対策

市場情報の提供 REALTOR®は、NARが提供する詳細な市場統計や経済指標にアクセスできるため、以下のような高度な市場分析を提供できます：

地域別価格トレンド分析
需給バランスの詳細評価
将来予測に基づく投資判断支援
金利変動の影響分析

バイヤーズエージェント vs セラーズエージェント

米国では、買主専属の代理人である「バイヤーズエージェント」と売主専属の代理人である「セラーズエージェント」に大別されています：

バイヤーズエージェント

買主の利益を最優先に行動
物件の欠陥・問題点の徹底調査
価格交渉での買主側代理
融資・保険手続きのサポート
引渡し後のアフターフォロー

セラーズエージェント

売主の利益を最優先に行動
物件の魅力を最大限にアピール
適正価格での迅速な売却実現
マーケティング戦略の立案・実行
買主候補者の資格審査

この二重代理制度により、売買双方が専門的なサポートを受けられる仕組みが確立されています。

手数料体系の特徴

米国の不動産取引では、独特の手数料体系が採用されています：

基本的な手数料構造

総手数料：売買価格の5-6%（地域により変動）
支払者：通常は売主が全額負担
配分：売主側・買主側エージェントで分割（通常2.5-3%ずつ）

FSBO（For Sale By Owner） 売り手と買い手がリアルターを仲介することなく直接取引する場合も多く、アメリカではこのような取引をFSBO（フィーズボー）と呼んでいます。これにより手数料を節約できますが、専門知識の不足によるリスクも伴います。

2024年NAR和解の影響 最近、組織は4億1800万ドルの法的和解によりヘッドラインを飾り、2024年後半に不動産手数料の支払い方法を変更することが決定されました。この変更により、手数料の透明性向上と競争促進が期待されています。

リアルター利用のメリットと注意点

消費者にとってのメリット

専門知識・経験の活用 REALTOR®は継続的な教育を受けており、最新の市場動向や法規制に精通しています。複雑な不動産取引において、このような専門知識は非常に価値があります。

倫理規定による保護 REALTOR®とREAL ESTATEエージェントの最大の違いの一つは、NARの倫理規定です。REALTOR®は規定に従う必要があります。この倫理規定により、以下の保護を受けられます：

利益相反の適切な開示
機密情報の厳格な保護
公正・誠実な取引の実施
差別的取扱いの禁止

ネットワークの活用 NARの150万人を超える会員のネットワークにより、以下のメリットを享受できます：

非公開物件情報へのアクセス
地域を越えた物件紹介
専門分野のエキスパートとの連携
迅速な情報共有・意思決定

MLS（Multiple Listing Service）へのアクセス REALTOR®であることは、ほとんどの地域MLSへの加入要件となっています。MLSにより、以下の情報にアクセスできます：

物件の詳細データ・履歴
市場価格動向の分析
成約事例の比較検討
物件の特殊事情・制約条件

選択時の注意点

資格の確認方法 REALTOR®を選ぶ際は、以下の点を確認することが重要です：

NAR会員証の確認
州不動産免許の有効性
専門分野の認定資格
地域協会での評価・実績

サービス内容の明確化 契約前に以下の点を明確にしておきましょう：

代理関係（バイヤーズエージェント/セラーズエージェント）
手数料の詳細（金額・支払時期・条件）
提供サービスの範囲・内容
契約期間・解約条件

コミュニケーション方針

連絡方法・頻度の合意
進捗報告のタイミング・内容
重要事項の説明・確認プロセス
意見の相違時の解決方法

リアルターとの効果的な協働方法

初回面談での重要ポイント

準備すべき情報 REALTOR®との初回面談では、以下の情報を整理しておくことが重要です：

予算の詳細（頭金・融資限度額・月次支払可能額）
希望条件の優先順位（立地・面積・設備・学区等）
購入・売却のスケジュール
特殊事情・制約条件

質問すべき項目

地域市場での実績・専門性
提供サービスの具体的内容
手数料体系・支払条件
同じような案件での成功事例

期待値の調整 現実的な市場状況を理解し、以下の点で期待値を調整することが重要です：

適正価格帯の把握
売却・購入にかかる期間
必要な諸費用の総額
市場リスクの理解

長期的な関係構築

信頼関係の醸成 REALTOR®との関係は一回限りではなく、長期的なパートナーシップとして捉えることが重要です：

定期的な市場情報の共有
投資機会の継続的な検討
家族構成変化に応じた住み替えサポート
相続・事業承継時の専門支援

紹介・推薦の活用 優秀なREALTOR®は、関連する専門家との強固なネットワークを持っています：

住宅ローン専門家
不動産鑑定士・検査官
弁護士・税理士
リフォーム・建築業者
保険代理店

このネットワークを活用することで、不動産取引に関連するすべての分野で最高品質のサービスを受けることができます。

よくある質問（FAQ）

Q1: REALTOR®と不動産エージェントの違いは何ですか？

A: REALTOR®は全米不動産協会（NAR）の会員である不動産専門家で、厳格な倫理規定に従うことが義務づけられています。一方、不動産エージェントは州の免許を持つすべての不動産専門家を指します。すべてのREALTOR®は不動産エージェントですが、すべての不動産エージェントがREALTOR®ではありません。