代物弁済の予約と仮登記担保法

不動産取引の初心者
先生が教えてくださった『代物弁済の予約』について確認したいのですが。

不動産の研究家
はい、どのような疑問がありますか?

不動産取引の初心者
履行期に債権額と土地などの価値にアンバランスが生じたとき、差額はどうなるのですか?

不動産の研究家
その場合は、仮登記担保法によって、清算期間が設けられます。清算が終わらない場合は、さらに受戻しの期間が認められています。
代物弁済の予約とは。
不動産取引で使われる「代物弁済予約」とは、債務者が返済期に約束通り返済できなかった場合に、その代わりに債務者が所有する土地や建物の所有権を債権者に譲り渡す約束をすることを指します。
返済期が過ぎても債務者が支払わず、債権者がこの予約を有効にすると、土地などの所有権は債権者に移転します。ただし、土地価格の高騰によって返済期に債権額との差が生じるようになったため、判例ではこの予約が担保の目的で行われていると判断され、差額の精算が必要とされるようになりました。
この考えに基づき、仮登記担保法が制定されました。この法律によると、代物弁済予約などによって仮登記や仮登録ができるものについては、予約が完了したとしても2カ月の精算期間を過ぎないと所有権が移転せず(第2条)、精算が終わらなければさらに5年間、債務者は土地等の受け戻しを認められます(第11条)。
代物弁済の予約とは

代物弁済の予約とは、当事者が将来、金銭債務を金銭以外のもので弁済することを約束することです。例えば、住宅ローンの返済を土地または建物で弁済することを約束する場合が考えられます。この予約は、債務者と債権者との間で合意書を交わすことで成立します。
履期徒過後の所有権移転

代物弁済の予約の解除や放棄がされ、履期が徒過した場合、予約に基づく所有権の移転登記がなされていなければ、代物弁済の予約は失権します。この場合、売買契約は代物弁済予約なしの単純な売買契約として成立しており、売買代金の債務不履行に対する担保として仮登記担保権が設定されていることになります。つまり、履期徒過後は、売主は買主に対して代物弁済の予約に基づく所有権の移転を請求することができなくなり、買主は売主に代金の支払いを請求されることとなります。
仮登記担保法の制定

仮登記担保法の制定は、代物弁済の予約がなされる際に、引き渡されるべき不動産に仮登記担保を設定することで、予約による担保権の確保を可能にする制度です。この制度は、債務者が約束の期限までに代金を支払わない場合に、債権者が担保物件の所有権を取得することができ、予約による担保権の安定化を図ることを目的としています。仮登記担保法により、債務者が代金を支払わない場合に債権者が担保物件を競売にかける必要がなく、より迅速かつ容易に所有権を取得できるようになり、取引の安全性が向上しました。
清算期間の経過まで所有権移転の猶予

代物弁済の予約と仮登記担保法においては、清算期間の経過まで所有権の移転が猶予されるという規定があります。清算期間とは、破産手続きにおいて、債権者に対する債務の弁済が行われるための期間のことです。この期間内では、破産者は代物弁済の予約を行っても、所有権は予約者に移転しません。
この猶予制度は、破産者の債権者保護を目的としています。清算期間中に所有権が移転すると、予約者は破産者の財産を優先的に取得することになり、他の債権者の利益が損なわれます。そのため、清算期間の経過までは、所有権の移転を猶予し、破産者の財産を公平に弁済に充てることが図られているのです。ただし、予約者が清算期間内に予約代金を弁済した場合など、一定の要件を満たせば、清算期間内に所有権を移転することも可能です。
債務者の土地等の受戻し権

債務者の土地等の受戻し権
代物弁済の予約と仮登記担保法において、債務者が土地などの財産を債権者に代物弁済として譲渡した場合、債務者は一定の条件を満たすことでその財産を取り戻すことができます。この権利を債務者の受戻し権と言います。
受戻し権は、担保提供を目的とする仮登記の抹消が行なわれ、債権が完全に弁済されたときに発生します。債務者は、受戻し権利を行使することで、代物弁済として譲渡した財産を債権者から返還してもらえます。ただし、受戻し権を行使できる期間は法定されていますので、期限内に権利を行使することが必要です。